あなたは、メールやLINE、フェイスブック、ツイッターなどのSNS(以下、オンラインコミュニケーション)で、誰かに伝えたいことが、うまく伝えられない、または伝わっていないと感じたことはないでしょうか?
メールやLINEなどのオンラインコミュニケーションは誰でも日常的に気軽に使っているものなので、このようなことは普段あまり気にしていない人が多いの実情です。
しかし、実はオンラインコミュニケーションでは、あなたの伝えたいことが、正確に伝わっていないことや、さらには誤解を招くもとになっていることも多いのです。
今回はオンラインコミュニケーションでは伝えたいことが、うまく伝わらない理由と、良好な人間関係を作りたいなら、その手段としてオンラインコミュニケーションを使わない方が良い理由についてお伝えします。
文章だけで言いたいことを伝えるのは難しい
オンラインコミュニケーションでは、文章のみでのコミュニケーションがメインになります。
しかし、文章のみで言いたいことを相手に伝えるのは、相当の文章作成能力が必要です。
たとえ、相手に伝わる「うまい文章」が書けたとしても、あなたの伝えたいことが相手に伝わる割合は、せいぜい半分程度です。
ある研究の結果によると、メールの内容が正しく相手に伝わった割合は、わずか50%だと言います。
相手に伝わるうまい文章が書けないのなら、その割合はもっと低くなることでしょう。
文章だけでは、伝えたいことが、半分程度しか伝わらない理由は、人間の普段のコミュニケーションには、言葉や文字による「言語コミュニケーション」だけでなく、表情、態度、しぐさ、話し方、声のトーンなどの「非言語コミュニケーション」が多くの役割を果たしているからです。
私たちは、表情や態度、しぐさ、身振り手振り、話し方、声の大きさ、声の調子などの非言語コミュニケーションで、実に多くの情報を相手に与えています。また、相手の非言語コミュニケーションから多くの情報を読み取っているのです。
非言語コミュニケーションの大切さ
コミュニケーションに関する法則で、「メラビアンの法則」という有名な法則があります。
この法則は、1971年にアメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが提唱したもので、「言語と非言語で、矛盾したメッセージが発せられたとき、人は非言語コミュニケーションの方を信用する割合が高い」というものです。
たとえば、他人に対して、口では「素晴らしいですね」とほめながら、顔は半笑いでバカにしたような表情をした場合は、言語と非言語で伝えるメッセージが矛盾しています。
このような場合、相手は言語コミュニケーションである言葉よりも、非言語コミュニケーションである表情の方を信用して、この人は本当はバカにしているんだなと受け止めることが多いということです。
メラビアンは、人はどんな割合で相手の発するメッセージを重視しているか、その調査結果を下記のように報告しています。
言葉による「言語情報」が相手に与える印象は7%。
しゃべり方や声質、声の調子などの「聴覚情報」が相手に与える印象は38%。
外見や表情や態度、ボディランゲージなどの「視覚情報」が相手に与える印象は55%。
このように、非言語コミュニケーションは、相手に多くの情報を与え、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているのです。
ですから、オンラインコミュニケーションのように言葉だけ何かを伝えようとしても、伝えたいことが相手に半分しか伝わらないのも当然のことだといえます。
ちなみに、このメラビアンの法則はあまりに有名なので、また聞きなどによって内容が勝手に派生していき、「話の内容よりも、見た目や態度の方が重要である」ということを説明した法則だと誤解している人も多いので注意が必要です。
この誤った情報をもとにして「コミュニケーションの上では話の内容よりも、見た目や態度の方が重要である」という誤った説明が、本やセミナーなどでも話されることが多々あります。
しかし、この法則は言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの間に矛盾がある場合に適応される法則であって、けっして、話の内容よりも、見た目の方が重要であるいうことを言っているのではありません。
ですから、非言語コミュニケーションとともに、言語コミュニケーションもおろそかにしてはいけないのです。
誤解は「脳の自動的な穴埋め」によって起こる
オンラインコミュニケーションは、多くの場合、言語コミュニケーションのみになるので、非言語コミュニケーションによる情報を相手に伝えることができません。
オンラインコミュニケーションは、直接会って話すのに比べて、相手の気持ちを読み取るための情報量が圧倒的に少ないのです。
言語のみによるメッセージを受け取った相手は、その足りない情報を「自分の常識や思い込みで、自動的に穴埋め」をします。
言語だけのメッセージを受け取った相手が不足している情報を意図的に穴埋めしてやろうと思わなくても、「自動的に」脳が足りない情報を、自分の持っている先入観で穴埋めして、自分なりに解釈してしまうものなのです。
穴埋めは自動的に行われるので、自分では足りない情報を穴埋めしたとは気付きません。
その結果、あなたの伝えたいことが伝わらないばかりか、誤って解釈され、誤解を招くことになるのです。
さらに危険なことは、言語コミュニケーションだけでは伝えたいことが相手にうまく伝わらないのにも関わらず、メッセージの送り手も、受け取った側も、言いたいことは正しく伝わった、正しく受け取れたと思っているところです。
「文章では相手にうまく伝わらないな」とか、「文章を送ってきた相手は本当は何を言いたいのだろうか?」、「誤読や誤解をしていないだろうか」などと思う人は少ないのです。
ですから、オンラインコミュニケーションでやり取りをしていたら、お互いのことを誤解してしまう可能性は高いのです。
円滑なコミュニケーションを取りたいのであれば、オンラインコミュニケーションの性質として、あらかじめこのことを頭に入れておく必要があります。
オンラインコミュニケーションは良好な人間関係を作る手段には向いていない
これまで見てきた通り、言語コミュニケーションだけではうまくコミュニケーションを取ることができないので、オンラインコミュニケーションは、良好な人間関係を築く手段や、交流から喜びを得る手段には向いていません。
交流を深めたり、コミュニケーションを取るのが目的であれば、オンラインで何度も連絡するよりも、たった1回でもオフラインで直接会って話をする方が大きな効果が得られます。
たとえば、親しい人と会って話をすれば、自然に笑みがこぼれるものですが、オンライン上のコミュニケーションでは、そうはいきません。親しい人に向けて文章を作っていても、笑みがこぼれる人などいないでしょう。
人は一人でいるときに比べ、他の人といるときの方が、30倍近く多く笑っているという研究結果もあります。
オンラインコミュニケーションは気軽に使えて便利なものではありますが、交流を深めたり、人間関係から喜びを得るという面で見たら、オンラインコミュニケーションは、オフラインのコミュニケーションには遠く及ばないのです。
社会の中で暮らしている私たち人間は、人との交流がなければ、生活していくことができませんし、喜びや楽しさを得ることもできません。
ですから、オンラインのつながりよりも、オフラインのつながりが大切なのは当然のことです。
時間というものは、一方を選べば、他のものは選ぶことができないという「トレードオフ」の関係にあります。
たとえば、一時間の自由時間があったとして、それをスマホを見る時間に使えば、人と会話をすることや、読書をすることや、運動をすることなど、その時間でできたはずの他のことは一切出来なくなります。
つまり、オンラインコミュニケーションに時間を使えば、その分オフラインのコミュニケーションに使える時間がなくなってしまうということなのです。
オンラインコミュニケーションに使う時間は、一回一回は短いかもしれませんが、合計すると、とても多くの時間を費やしているものです。
オンラインコミュニケーションに時間を使えば、オフラインのコミュニケーションに使える時間を失ってしまうので、良好な人間関係を作るためには、そして、充実した人生を送るためには、オンラインコミュニケーションの時間を短く、オフラインコミュニケーションの時間を多くすることが、とても重要になるのです。
まとめ
メールやLINEなどのオンラインコミュニケーションでは、伝えたいことは、せいぜい半分程度しか伝わりません。
そして、オンラインコミュニケーションは、誤解を招く恐れがあることも、あらかじめ頭に入れておく必要があるでしょう。
重要ではない、ちょっとした用事を伝えるくらいならオンラインコミュニケーションでもいいかもしれませんが、ある程度大事なことを伝えるときや、コミュニケーションを取るのが目的であれば、オンラインコミュニケーションは使わない方が良いでしょう。
良好な人間関係や交流から得られる喜びは、オンラインではなく、オフラインの生の世界で生まれるものです。
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