あなたは普段、服を着るときに何を基準に選んでいるでしょうか?
服を選ぶ理由は、自分の好みの服だからとか、流行の服だからとか、着心地が良いからとか、おしゃれに見えるからなど、様々にあると思います。
あるいは、服は暑さや寒さをしのぎ、着られるのであればどれでもいいという、服装には無関心な人もいることでしょう。
もちろん、どのような理由で選んでいるのであれ、どの服を着るのかは、まったく個人の自由です。
どのようなファッションをするかは、好きに選んでもいいのですが、ファッションが人間の心理にサブリミナルな影響を与える(潜在意識下に働きかける)ということは、知っておいた方が、人生のあらゆる局面において有利になるといえます。
今回はファッションが及ぼす心理的な影響についてお伝えします。
ファッションは無意識のうちに人に影響を及ぼしている
人は他人の服装を見て、人となりを判断しています。
たとえば、あの人はおしゃれだなと思うことや、だらしない格好だなと思うのは、意識上に上って来ることであり、顕在意識による判断です。
その顕在意識による評価とは別に、意識に上らない「潜在意識の部分」にもファッションは影響を与えているのです。
たとえば、黒い服を着ると知らず知らずのうちに攻撃的になるといったら、信じられるでしょうか?
自分では服の色によって行動が変わるとは思ってもいないのに、実際に行動が変化するのであれば、それは本人が気付かないうちに無意識のうちに影響を受けているということになります。
詳しくはのちほど説明しますが、スポーツの試合で黒いユニフォームを着ると、ラフプレーが多くなり、反則が取られる数も増えます。
ファッションが、無意識のうちに人に及ぼす影響は、大きく分けて、2種類あります。
1つは、ファッションが無意識のうちに他人に及ぼす影響。
もう1つは、ファッションが無意識のうちに自分に及ぼす影響です。
それぞれについてみていきましょう。
他人に及ぼす影響:対外シグナリング
社会科学で、対外シグナリングと呼ばれるものがあります。
簡単に言うと、私たちが身に付けるものを通して、自分が何者であるかを他人に知らせている信号のことです。
人は、ファッションによって、自分がどの様な人物であるかという信号を他人に送っているのです。
そして他人は、一目でその信号を自動的に(無意識のうちに)読み取り、評価を下しているのです。
テキサスで行われた実験では、31歳の男性に、信号無視をして道路を横断させました。信号無視をする際に、服を変えてみて、服装が周りの人に影響を及ぼすかどうかを観察したのです。
半分の状況では、ピシッとしたビジネススーツにネクタイという格好をさせました。
もう半分の状況では、作業服を着せました。
研究者たちは少し離れた場所から、信号待ちをしている人のうち、何人が男性の後ろについて道路を渡ってしまうかを数えました。
服装が他人に影響を与えないのであれば、スーツ姿のときも作業着姿のときも、男性の真似をして信号無視をする人の数は変わらないはずです。
さて、結果はどうなったかというと、スーツを着ているときは、作業服を着ているときに比べて、ついてくる人の数は3.5倍にもなりました。
着る服によって、周りの人の行動が明らかに変わったのです。
男性の後について信号無視をした人は、身なりがきちんとしている人=きちんとした人、誠実な人だと無意識のうちに判断して、その人が信号無視をしてるのなら、その行為を真似てもいいだろうと思ったのでしょう。
私たちがファッションを通して発するシグナルは、間違いなく周りの人たちに多くの情報を与えています。
他人にどのような人物に見られるかは、また人に影響を及ぼすかは、服装によって大きく違ってくるのです。
自分に及ぼす影響:自己シグナリング
私たちは、自分のことをよく知っていると思いこんでいますが、実は自分のことをあまりよくわかっていないものです。
私たちは他人の行動を観察し、評価するのと同じ方法で、自分のことも観察し、評価しているのです。つまり、自分の行動を観察して、自分の人となりを推し量っているのです。
たとえば、お年寄りに席を譲ったとしましょう。そうすると、その行動を自分自身で見て、「私は、お年寄りに席を譲ったのだから、親切な人間なのだろう」と自己評価をしているのです。
ファッションで言えば、私はきちんとした格好をしているので、きちんとした人間なのだと評価することを、自己シグナリングと呼びます。自己シグナリングは、私たちが身に付けるものを通して、自分が何者であるかを自分に知らせている信号です。
ピシッとしたスーツを着て、きちんと磨かれた靴を履いて歩けば、自然といつもよりも背筋が伸び、行動もテキパキとするようになります。
自分では別に意識しているわけではありませんが、きちんとした格好をすれば、無意識のうちにそのようになるものなのです。
ですから、面接や商談のときに、ピシッとしたスーツ姿で臨めば、着ている本人も成功した感じの自分を目にするため、はるかに良い受け答えができるのです。
また、ゴミ拾いのボランティア活動で、普段着で参加した場合と、作業着を着て参加した場合とでは、集めたごみの量に差が出ることがわかっています。
作業着を着れば、普段着の場合と比べ、無意識のうちにゴミ拾いに積極的になるのです。
コーネル大学の心理学者トーマス・ギロヴィッチは、NFL(アメフト)とNHL(アイスホッケー)の過去のデータを丹念に調べ、黒のユニフォームを着たチームの方が、他の色のユニフォームを着たチームよりも、反則やペナルティが多いことを突き止めました。
また、同じチームでも、ホームゲームとビジターゲームで違う色のユニフォームを着る場合は、黒のユニフォームを着たときの方が、反則が増えていました。黒いユニフォームを着ると攻撃性が増し、ラフプレーも、そして反則を取られる回数も増えていたのです。
このような調査結果や実験結果は数多くあり、くつろいだ服を着れば、いつもは近寄りがたい雰囲気の人が親しみやすくなったり、偽ブランド品を身に付けると、不正を行いやすくなるというように、着る服によって、自分の行動が無意識のうちに変化するのは間違いありません。
家では誰にも見られることがないから、だらしない格好をしてもいいだろうと思っていても、自己シグナリングによって、無意識のうちに自分はだらしない人間だ認識してしまうのは恐ろしいことです。だらしない服装をしていれば、普通の服装をしているときに比べて、自然に行動もだらしなくなってしまうのです。
以上のように、ファッションというものは、自分にも他人にも、無意識のうちに影響を及ぼすということを頭に入れて、そのことも加味して服を選ぶようにすれば、良い結果が得やすくなります。
まとめ
どの服を着るか?
どのようなファッションをするのも、本人の自由です。
ただし、ファッションについて忘れないようにしたいことは、人は無意識のうちにファッションを通して、人を判断しているということです。
私たちは、他人を見ると、ファッションを通して、瞬時にそして自動的に、どのような人物かを評価します。
さらに、自分のファッションについても、自分はどのような人物であるかをファッションをによって、自己評価しているのです。
この視点を取り入れて服を選べば、自分が望む結果を得やすくなるでしょう。
たとえば、もっと、きちんとした生活をしなければならないと思っているのなら、ピシッとした服をいつも着るようにすればいいのです。そうすれば、無意識のうちに自分はきちんとした人間であると認識し、その自己認識にあった行動をしやすくなるのです。
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