あなたは、「ムカッと感じたから怒る」とか、「ショックを受けたから悲しむ」といったように、怒り放題、悲しみ放題、恨み放題、本能のままにネガティブな感情を野放しにしてはいませんか?
そのようなネガティブな感情から生まれる言動は、周囲の人の心を傷つけ、また自分自身にも害を及ぼします。
平常心にある今の状態なら、「そんなの当たり前じゃない」と思われるかもしれませんが、何かあったとき、いざというときに、自分の感情をコントロールできているでしょうか?
きっと、どんなことがあっても、自分の感情をコントロールすることができるという人は少ないと思います。
もし、好ましくない感情をコントロールすることができたら、もっと楽しく生活ができるし、人間関係ももっとうまくいくようになりますよね。
今回は、感情をコントロールする方法についてお伝えします。
人の脳は感情をコントロールできるように作られている
万物の霊長と言われる人間は、感情をコントロールできるように進化しています。
感情は大脳の古い皮質(古皮質)で営まれます。
そして、古い皮質を超えて進化した新しい皮質(大脳新皮質)、特に前頭葉では、思考、理性、創造など、高次機能な活動が営まれます。
古い皮質で生まれる感情は、それ以上に進化した大脳新皮質の働きである、思考や理性、意思によって、コントロールすることができます。
つまり、人の脳は古皮質で生まれる感情というものをコントロールできるように作られているのです。
人間は感情をコントロールできるようにできるのに、感情をコントロールしないのでは、宝の持ち腐れです。
せっかく、脳がそのように進化してきたのに、ネガティブな感情をそのまま放っておくというのでは、進化してきた意味がなくなってしまいます。
ネガティブな感情は体に毒である
ネガティブな感情とは、怒り、悲しみ、恐怖、不安、恨み、ねたみ、ひがみ、復讐、イライラ、くよくよ、落胆、不平不満の気持ち…
このような、私たちのエネルギーを奪い、疲れさせる感情です。
感情というものが、私たちの体にどれだけ大きな影響を与えるか真剣に考えている人は、ほとんどいません。
しかし、感情は神経系統を通じて、体に大きな影響を与えています。
たとえば、恥ずかしいことがあると、顔が真っ赤になりますよね。
これは、心に恥ずかしいという感情を感じると、神経を通し、顔の血管を膨張させ、血流が多く流れ、結果として顔が赤くなっているのです。
このように、心が体に与える影響はとても大きなものなのです。
ネガティブな感情を抱くと、神経系や、ホルモン系、内臓の働きをかき乱して、私たちの健康を害してしまいます。
食欲がなくなったり、肌が荒れたり、胃が痛くなったり、お腹が痛くなったり、白血球やリンパ球の活動が鈍り、免疫力、抵抗力が低下したりと、実に様々な悪影響を及ぼします。
怒りの感情を感じたり、悲しんだり、恨みを感じたりすると、ただ疲れを感じるだけでなく、体を傷つけ、身を削っていることになるのです。
「ネガティブな感情は、体に毒である」ということを忘れてはいけません。
人間関係で疲れないためにも、健康を害さないためにも、ネガティブな感情は抱かないようにしなければなりません。
自分の身は、自分で守らなければならないのです。
ネガティブな感情は、エネルギーを消耗し、健康や美容をむしばみ、寿命を縮めます。
刺激に対する反応は自分で選べる
言葉や行動、状況や環境などの、外から受ける刺激に対して、どのように反応するかは、自分で選ぶことができます。
それは、どういうことでしょうか?
オーストリアの心理学者、ヴィクトール・フランクルのエピソードをご紹介しましょう。
ユダヤ人の心理学者、ヴィクトール・フランクルは、第二次世界大戦でナチスドイツの強制収容所に送られ、筆舌に尽くし難い体験をしました。
両親、兄弟、妻は収容所で病死したり、あるいは毒ガス室に送られたりして、妹以外の家族全員が亡くなりました。
フランクル自身も拷問され、数知れぬ屈辱を受けました。
ここで彼は、ナチスの兵士でも決して奪うことのできない自由、後に「人間の最後の自由」と名付ける自由を発見しました。
たしかに収容所の看守たちは、彼の体をどうすることもできましたが、フランクル自身は、どの様な目にあっても、アイデンティティは少しも傷ついていませんでした。
何が起ころうとも、それが自分に与える影響を、自分自身で選択することができたのです。
フランクルの発見した、「受ける刺激と、それに対する反応の間には、選択の自由がある」ということを図解すると、以下のようになります。
このように私たちは、どんな刺激を受けても、どう反応するかを自分自身で自由に決められるのです。
ですから、自分で「どんな刺激が来ても、心を傷つけさせない」と決めれば、いつでもポジティブな反応をすることができます。
心と呼吸の関係
心と呼吸は、深い関わりを持っています。
気持が焦っていると、呼吸は早く浅くなります。
怒っていると、呼吸が荒く乱れます。
心の乱れは、そのまま呼吸の乱れとなって現れます。
心と呼吸は、双方向の関係にあるので、焦りなどで心が落ち着かない状態になると呼吸が乱れますが、逆に、呼吸が乱れると、心も落ち着かなくなります。
呼吸は、普段は自分の意思とは関係なく、自律神経の働きによって自動的に行われていますが、運動神経を介して、自分の意思でもコントロールすることができます。
つまり、呼吸をコントロールすることで、心もコントロールすることができるということです。
呼吸を整えることは、心を整えることにつながります。
感情を鎮める呼吸法
感情を鎮めるシンプルな呼吸法をご紹介します。
まず息をすべて吐き出します。
そして、軽く口を閉じて、鼻から音もせず、静かにゆっくりと、規則的な呼吸を意識的に行うのです。
たったこれだけのことで、感情を鎮める効果があります。
「何回やればいいの?」と聞かれることがありますが、それは、自分の心の状態によって変わってきます。大きく心が動揺しているときと、小さい時では落ち着くまでに差が出ますよね。
ですから、自分で心が落ち着いてきたと感じられるまでやってみればいいのです。
このようなことは、頭で理解するよりも、実際に行ってみて感じた方が、はるかによく理解できると思います。
また、呼吸をするときに、吐く息とともに「怒りや悲しみなどのネガティブな感情」を体の外に出す。吸う息とともに、「ポジティブなエネルギーを体の中に取り入れる」というイメージで呼吸を行えば、「観念の力」によって、より心に働きかけることができるので、更に効果的です。
まとめ
人間は、感情をコントロールできるように進化した脳を持っています。
ですから、悪感情は野放しにしてはいけません。
怒りや恐れ、悲しみなどのネガティブな感情は、心身を弱めることになり、心身に害を与えます。
刺激と反応の間には、選択の自由があります。
刺激に対して、どう反応するかは、自分で選べるので、どんなときでも、ポジティブな反応を選ぶようにしましょう。
心と呼吸は相関関係にあるので、呼吸によって感情をコントロールすることができます。
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