人の気持ちを正確に知る方法

社会の中に生き、社会的生活を営んでいる私たち人間にとって、他人との関係は、切っても切れないものです。

社会生活をしている以上、仕事でもプライベートでも、うまくいくかどうかは、他人との関係に大きく左右されます。

また、ストレスや悩み、不満、トラブルなどの多くも人間関係から生じますが、それは、相手のことを誤解したり、相手のことを理解していないために起こることも少なくありません。

人間関係が良好に保てれば、人生を送る上で大きな役に立つことは言うまでもありませんよね。

もし相手の気持ちを知ることができたら、仕事に、恋愛に、友情に、家庭にと、社会生活がどんなにうまく行くことでしょう。

今回は、人の気持ちを正確に知る方法をお伝えします。

相手の身になって考えることは有効か?

「相手の身になって考えてみること」は、人の気持ちを知るための方法としてよく言われることです。

デール・カーネギーの名著、「人を動かす」の中でも、「もし、自分が相手だったら、はたして、どう感じ、どう反応するだろうか?」と自問自答してみることと、相手の身になることの大切さを説いています。

これは素晴らしい考え方の一つですが、この方法には大きな弱点があります。

それは、人間は、一人ひとり、考え方や感じ方が違うということです。

 

同じ環境で育ち、同じ教育を受け、同じ経験をして、自分と同じ考えをする、非常に似ている人間同士になら役に立つかもしれませんが、たいていの場合はそうではありません。

「もし、自分が相手だったらどう思うか」という方法は、自分を中心として、他人のことを考えるという「自己中性バイアス」がかかりやすいのです。

 

私が以前、もめ事を起こしている人たちの間に入り、仲裁をしたときにもこのことを如実に感じました。

私が、一方の相手に対して、「相手は、あなたがしたことに対して怒りを感じています。もしあなたが、同じことをされたらどう思いますか?」と尋ねたところ、「もし、私だったら別に何とも思いませんよ」と答えました。

相手が怒りを覚えたことは、自分では何とも思わないから、他人も何とも思わないのだろうと考えて行ったことだったのです。

自分を基準にして他人のことを考えることは、他人のことを考えないよりは、ずっと良いことですが、「他人は自分とは違うかも知れない」ということを念頭に入れておかなければ思わぬトラブルを引き起こすことになります。

もし相手ならどのように考えるか?他人の視点で見ることは有効か?

「相手の身になって考えてみること」を、もう一歩進めた方法に、「他人の視点から物事を見る」という「視点取得」という方法があります。

これは、「もし自分だったら」という自分の視点を離れて、「もし、あの人なら」と相手の視点で見るということです。

視点取得は、相手の視点を正しく想像したり、理解する能力に大きく左右されます。

この能力が高くないと、間違った想像をする可能性もあります。

もし、相手に対して間違ったイメージを持っていたら、視点取得によって、かえって誤解が大きくなる場合もあります。

例えば、あの人は負けず嫌いだから、あの人の視点で見れば、褒められるより、叱咤激励された方が、やる気が出るだろうと相手のことを想像したとします。

そこで、やる気を出させるために厳しい激を飛ばしたとします。

しかし、その人は負けず嫌いな面もあるけれど、普通の人と同じように、人から厳しく言われるのは好きではないので、やる気を失いました。

これは、視点取得をしようとしたことでかえって、失敗した例です。

視点取得しなければ、一般の人は、叱るより褒めた方がやる気が出るので、褒めていたところを、相手のイメージを読み間違えたため、違う視点を取得して、失敗してしまったのです。

視点取得の実験で、104組みのカップル(大半は夫婦)に対して行ったものあります。

その実験では、20個の質問に相手がどのように答えるか予測するもので、普通に相手がどう答えるかを予想したときより、相手の立場に立って、相手の視点で考えることを促されたときの方が、成績が悪くなりました。

心理学研究者が視点取得が有効性をずっと探してきたにも関わらず、証拠はまだ見つかっていません。

相手の視点を考えてみても、相手の気持ちを理解できるわけではないということです。

身体言語を読み取ることは有効か?

他に相手の心を読む方法で有名なものに、身体言語(ボディーランゲージ)から、相手の心を読むというものがあります。

これは、微表情やしぐさなどから人の本心を読み取れるとしているものです。

例えば、有名なところでは、コミュニケーションをテーマにした本などにも良く出てくる、腕組は心の盾で、心を守ろうとしているというものがあります。

人の感情は、知らず知らずのうちに、しぐさや表情に表れるという考え方は、もっともらしいように感じます。

人の心は表に出てしまうという思い込みがあるのです。

被験者に嘘をつかせたり、強い感情を隠してもらったりした実験では、被験者は自分の本心が、相手に悟られてしまう可能性を実際より、はるかに高く見積もっていました。

実際は、人は嘘をつくのが自分が思っている以上に上手だということがわかりました。

アメリカ運輸保安庁は、微表情をはじめとする、わずかなボディーランゲージを手掛かりに、相手の嘘を見抜くという訓練プログラムを行いました。

訓練を受けた約3000人の「行動分析官」は、全米の161の空港で手荷物検査に並ぶ乗客に対して、当たり障りのない雑談をしながら、相手の様子をうかがい、テロリストや犯罪者を見つけ出すという試みを行いました。

多額の費用を掛けたこの試みの成果はどうだったのでしょうか?

アメリカ会計検査院が議会に提出した資料によると、2004年から2008年の間に、行動分析官の監視する空港で、約15万2千人が拘束され、実際に逮捕されたのは1083人でした。

つまり、行動分析官が識別した人の1%以下で、残りの99%は不当に拘束されたことになります。

しかも、逮捕された中にはテロリストは一人もおらず、逮捕者で最も多かったのは不法在留外国人でした。

人の気持ちや考えは表情やしぐさに表れるかも知れませんが、その程度はわずかなもので、そこから、気持ちを読み取ることは、訓練を積んだとしても不可能のようです。

  

人の気持ちを正確に知るには聞く必要がある

人間は自分が思うほど、他人のことをよくわかっていません。

他人の気持ちを読めるとか、理解しているとか表情や、しぐさで、人の心がわかるなどと、過信しないことが重要です。

相手の心が読めるという話は魅力的なので、信じたくなりますが、科学的に証明されたものはありません。

人の心を知るには、相手の心を読んだり、想像したりするのではなく、めんどくさがらずに、相手に実際に質問して話を聞く必要があるのです。

まとめ

相手の気持ちを知るには、「もし自分だったら」と自分を基準として相手の気持ちを考えるのでは不十分です。

相手の立場を考え、相手の視点を取得して考えても、相手のイメージを読み間違えると返って、失敗してしまいます。

身体言語を手掛かりに読み取れるのはごくわずかであり、訓練を積んだとしても、ほとんど効果はありません。

以上のことを踏まえ、人の気持ちを正確に知るには、相手の本当の気持ちは読めないことを理解し、謙虚な気持ちで、相手に実際に聞く必要があるのです。

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